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大和証券株式会社の導入事例:Google Cloud Speech-to-Text で面倒なテキスト入力を自動化。その成功を起点に今後の積極的なクラウド活用を推進

2019年6月27日
Google Cloud Japan Team

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日本 5 大証券会社の 1 社として、国内金融・証券業界に大きな貢献を果たしている大和証券。求められるセキュリティ基準の高さから、クラウド移行が難しいとされる金融・証券業界ですが、大和証券はそこに向けた最初の一歩を踏み出しました。それが、Google Cloud Speech-to-Text を活用した音声によるテキスト入力の実現。その背景と、今後も見据えた狙いについて、同社システム企画部の皆さんにお話をお伺いしました。

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利用している Google Cloud Platform サービス

Google Cloud Speech-to-TextCloud Translation


写真左から

  • システム企画部 兼 大和証券グループ本社 システム企画部 主任 川口 哲平氏
  • システム企画部 ITソリューション課長 兼 大和証券グループ本社 システム企画部 ITソリューション課長、副部長 武部 啓造氏
  • システム企画部 兼 大和証券グループ本社 システム企画部 主任 鈴木 宏美氏

大和証券株式会社

1902 年に設立された「藤本 ビルブローカー」を源流とする老舗証券会社。大和証券のほか、大和証券投資信託委託や大和総研、大和企業投資などを傘下に擁する大和証券グループ本社の基幹企業。グループとして掲げる企業理念は「信頼の構築」「人材の重視」「社会への貢献」「健全な利益の確保」。現在の従業員数は 16,516 名(2018 年 9 月時点)。

Google Cloud Speech-to-Text なら金融・証券業界独自の用語にもスムーズに対応

「私が所属している先端 IT 戦略部(現在は組織改編によって「システム企画部」に)は、先端テクノロジーを駆使して、業務の効率化を図る取り組みを企画する部署。今回お話しする Google Cloud Speech-to-Text(Speech-to-Text) は、従業員のテキスト入力をサポートするために導入を決定しました。」(武部さん)

全国 160 か所の拠点で、約 9,000 名の従業員が働く大和証券では、取引情報、顧客情報の共有化のため、商談の記録を CRM(Customer Relationship Management)システムに細かく入力するという業務があります。しかし、その入力内容は個人差が大きく、特にキーボード タイピングを苦手とする従業員が入力に手間がかかりすぎることから、必要最低限の情報しか入力しなかったり、逆に慣れないキーボードで丁寧に入力しようとした結果、勤務時間が増加してしまう問題が発生していたといいます。

「実はその少し前に、お客様からの電話内容を録音して音声認識技術でテキスト化するという取り組みをおこなっていたのですが、これをその問題の解決に使えるのではないかと考えました。ただ、その機能が社内で実際にどれくらい使われるかはまったくの未知数。そこで今回は、使った分だけの従量課金でコストを抑えられるクラウド型の音声認識エンジンを利用することにしました。」(武部さん)

そうして、さまざまな音声認識ソリューションを評価していくなかで、最終的に  Speech-to-Text にいきついたのは、認識精度が高かったから。金融・証券業界では、「取引残高報告書」を「取残(とりざん)」と略すなど、一般に使われない独自の用語が多数存在していますが、Speech-to-Text はわずかな学習と独自辞書の追加で、さまざまな専門用語の認識をマスター。前後の文脈をもとに正しくテキスト化できたといいます。

「方向性の確定後、実際に開発をおこなったのは大和証券グループのシステム開発会社である大和総研なのですが、6 名のエンジニアで約 4 か月かけて、既存の CRM システムに Speech-to-Text を駆使したテキスト入力機能を組み込むことができました。2018 年 5 月の連休明けから各拠点に展開し、利用を開始しています。」(武部さん)

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CRM システムに組み込んだ Speech-to-Text を活用したテキスト入力機能

「導入後の効果の検証はこれからなのですが、現場からは、これまでキーボード タイピングが苦手で入力が億劫だったという方から、より細かく商談内容を記録できるようになったという声が届いています。今後は、そうして情報量の高まった商談記録が実際のビジネスに活用されていくことに期待しています。」(鈴木さん)

「なお、コストに関しては上限を設定しているほか、マイクをオンにしたまま放置してしまって無駄な利用料金が発生してしまわないよう、無音状態が続くと自動的に切れる設定にしています。」(武部さん)

将来的にはクラウドでグループ各社、各拠点の情報共有を進めていきたい

独特な金融・証券用語を正確にテキスト化できる Speech-to-Text の導入によって、当初の課題をクリアした大和証券ですが、その成功から、新たな可能性が生じ、次なる取り組みが生まれていったと言います。

「思った以上に精度が高かったため、CRM システムへの入力だけでなく、広範な用途に使えるよう社内ポータルに音声認識システムを配置し、開放しました。ボタンを押して、マイクに向かって話すとその内容がテキストデータとして表示されます。それをメールやドキュメントなどにコピー&ペーストして利用してもらうイメージです。また、聴覚障害のあるスタッフが社内研修用のビデオを見る際に、自動的に字幕が付くような仕組みも作りました。これまでは別途、字幕付きビデオを作っていたのですが、Speech-to-Text を活用すれば、動画の音声をリアルタイムにテキスト化し、画面上に表示することができます。精度面でもまったく問題ありませんし、リアルタイムの情報共有の実現と同時に、結果的にはその手間と費用の大幅削減にもつながりました。」(武部さん)

なお、武部さん曰く、Speech-to-Text の導入には、これから拡大していくクラウド活用を見据えたテストケースという意味合いもあったそうです。情報セキュリティがとりわけ厳しい金融・証券業界では、外部にデータを置くことがタブーとされています。そこで、まずはデータを外部サーバーに保存することなく利用できる API でクラウド サービスを使い始めることにしたのです。

そして、現在は Speech-to-Text 以外の機能にも利用を拡大。具体的には Cloud Translation を社内の翻訳業務に導入しました。こちらも社内ポータルに「大和翻訳センター」という名称で配置し、誰でも使えるようにしています。

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「大和証券では、機密保持の観点から外部の翻訳サービスの利用も禁止されているため、これまで英語で書かれた契約書やレポートの翻訳が大きな負担になっていました。しかし、Cloud Translation なら、Speech-to-Text 同様、社内システム上で問題なく利用できます。これまでも多くの社員にとって有用なレポートなどは、本部で翻訳し配布していたのですが、大和翻訳センター設置後は、コストや工数をかけずに、それぞれの社員が個別に必要な情報を素早く翻訳できるようになりました。」(川口さん)

現在はこうした API レベルでの活用に留まっている大和証券の GCP 活用ですが、今後は、段階的にその活用を深めていきたいと武部さんは言います。

「大和証券グループの大きな課題として、各社、各拠点が閉じたネットワークで業務をおこなっており、情報の共有が阻害されているというものがあります。やむを得ないことではあったのですが、今後はそうもいきません。セキュリティの問題をクリアにしつつ、クラウドへのデータ保存・共有などを実現していきたいですね。たとえば、現在は社内の地図データにクリッピングしている顧客情報を Google Maps Platform に移行できたらルート検索などの機能を組み合わせて使えるようになり、さらに業務効率が改善するのではないかと思っています。また、今後、AI 技術の導入によって、大和証券グループが進めている働き方改革がさらに推進されていくことにも期待しています。」(武部さん)

「大和翻訳センターの機能改善要望で最も多いのが、PDF や画像などに記載された英文(画像)の翻訳・テキスト化。今後、クラウド対応を進めていくなかで実現していきたいですね。」(鈴木さん)

「また、検索機能もさらに活用していきたいですね。現在は拠点ごとに情報が散乱しており、その鮮度もまちまちです。誰もが最新のデータを簡単かつ即座に入手できる環境の構築が急務だと考えています。また、アクセスログをきちんと解析して、利便性の向上にも役立てていきたいです。」(川口さん)

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